検定試験の総括と全体講評
第10回 Advancedコース治験実務英語検定の総括と講評
全体総評
Advanced コースはリスニング、読解、英訳の3技能を対象にした検定試験です。Basicコースに比べて難易度が高いものの、適切な取り組み方をすれば合格に近づくことができます。合格者の傾向を見てみますと、リスニング、読解、英訳のそれぞれで一定以上の点数を獲得されていました。検定に合格するには、バランスよく3技能を習得しておく必要があります。
また、課題数が多いため、答案作成時には時間配分に注意し、すべての課題に解答できるよう迅速に進める必要があります。特に、最後に出題される長文英訳では、試験時間内に一部の課題しか解答に着手できていない方や未着手の方が多く、得点率が他の課題と比べて低くなる傾向があります。長文英訳まで対応できる英語力を身につけた受験者が合格している傾向が強く見受けられます。時間内に多くの課題に取り組むためには、業務で頻出する表現は辞書や参考書を見ずに英文を書けるようにしておく必要があります。
今回のリスニング課題と読解課題では、優秀な成績を修めた方が多くいらっしゃいましたが、英訳課題では点数が伸び悩んだ方が散見されました。英訳課題は設問数も多く、英文を書く技能(ライティング力)をしっかりと習得できていないと合格するのは難しいでしょう。
今回の英訳課題では、頻出表現の用法、正しい前置詞の選択等の事項において誤りが散見されました。ひとつひとつは小さな誤りでも、積み重なると読み手が情報を読み取れない可能性があります。また、文を読むリズムが悪くなり、読みにくい文章となります。
語学習得は日々の積み重ねが重要になります。英文を発想する力を養い、また、学習したことを業務などで繰り返し使用することで身につけることができます。業務であまり使うことがない方々は、英訳を添削してくれる講座や英語を話す講座を受講する、同僚や友人と英語でコミュニケーションを取る場を設けるなど、英語に触れる機会を少しでも多くつくるようにしましょう。
リスニング(出題数:15、得点率:93.5%)
リスニング問題では、検体の処理方法の説明や被験者対応の相談、定例会議での進捗報告などを聞き取り、与えられた設問に解答する問題を出題しました。
状況をきちんと聞き取り、適切に解答できている方が多くいらっしゃいました。
出題例
次のような英文を音声で聞き、設問に答えていただきます。
定例会議
Now, I will report on the current progress of the study. The protocol will be revised on March 15 and it is scheduled to be released within 5 business days.
In terms of entry status, 650 patients have been enrolled in total as of today. The number of subject withdrawals has been increasing. Please ask each study site for help to prevent subjects from dropping out.
読解(出題数:2、得点率:72.4%)
読解では、英文を和訳する課題と選択肢から正解を選ぶ課題の2パターンを出題しました。
英文を和訳する課題では原文の情報が抜けていたり、文法理解が不十分なために係り受けを誤ったりしていると思われる答案がありました。英文で書かれた情報を抜け漏れなく日本語で表現できるようにしましょう。
選択肢から正解を選ぶ課題では、英語の長文を限られた時間内に正確に理解し、設問に答える必要があります。日頃から英文に慣れ、読解の速度を上げるなどして、読解への対応力を高めておきましょう。
出題例
試験デザインに関する記載の英文和訳
短文英訳(出題数:15、得点率:60.4%)
1文もしくは2文程度の日本語を英訳する課題を出題しました。限られた時間内できちんと英訳できるかを問う課題でした。
日本語で書かれた状況を読み手に誤解を与えない範囲で英文を書けている方がある程度いらっしゃいました。一方で、日本語文の情報が抜けていたり、誤った語法で書いていたりする方もいらっしゃいました。業務で頻出する表現を中心に出題しましたので、よく用いる表現は復習して身につけておきましょう。時間内で課題を終わらせるには、それぞれの場面で用いる適切な動詞やその動詞が取りえる構文(自動詞/他動詞用法、that節を取れるか、コロケーションなど)をしっかり習得しておくことが必要になります。
出題例
課題文を英訳してください。
被験者の入院中の経過は順調であり、退院記録にも合併症の記載は認められなかったが、退院直後に肺炎に罹患した。
長文英訳(出題数:3、得点率:38.9%)
1つの場面を説明する日本語を英訳する課題を出題しました。ある程度の長さがある文章をきちんと構成し、英文で表現できるかを問う課題でした。
約半数の方は最後の課題まで取り組めていませんでした。最後まで取り組まれた方の多くは全体の構成を把握し、前後関係も意識して英訳できていました。細かい点でミスは見受けられましたが、情報の伝達は十分に行えていました。
短文とは異なり、長文では1文ごとの正確さに加え、前後関係を考えて英訳する必要があります。論理展開がしっかりとできているか考えながら英訳できるようにしましょう。
出題例
次のような課題文を英訳していただきます。
2023年2月8日に被験者が自宅で昼食を摂ろうとしたときに腹痛、嘔吐、浮動性めまいが発現し、同日に被験者は入院した。CT検査により中等度の小腸閉塞と診断された。静脈内輸液による治療を受け、経鼻胃管を挿入し経口摂取が制限された。治験薬の投与は中断された。…
英訳問題での特徴的な誤りをいくつか紹介します。
- [diagnose] 「(医師が)病気や症状を診断する」という意味で、症状を主語にする場合は、[症状+be diagnosed as +疾患名(by 医師/on 検査)]と表現することができます。
- [(病気/症状が)消失する] この意味では[disappear]を用いることができます。ただし、[disappear]は自動詞のため、受動態にはできません。
- [following] 「~は以下の通り」について、followingやas followsなどを用いて、その後に詳細を箇条書きする場合は、コロンを用いるのが一般的です。
- [冠詞] 可算名詞に冠詞がついていないケースがありました。CRAやCRC、SAEなどの略語であっても冠詞は必要です。
第10回 Basicコース治験実務英語検定の総括と講評
全体総評
本検定(Basicコース)はライティングと読解の2技能を対象とした英語試験です。治験実務で使用される英語の基礎を正しく理解しているかを問う試験となっています。設問はすべて選択式で出題されます。
試験問題は、CRAやCRCが業務で遭遇する様々な場面を想定し出題されます。一部の課題はCRAまたはCRC特有の業務シーンから出題しています。
(例:CRA向け:モニタリング報告書/CRC向け:EDCのクエリ対応)
試験時間は1時間と限られており、その時間内で様々な課題に取り組む必要があります。そのため、設問を正確かつ迅速に読み取り、解答する力が求められます。文法事項や単語を調べる時間は多くなく、以下の準備が必要です。
・基本的な英文法や構文の習得
・業務で頻出する単語の意味や役割の理解
合格者は、単語補充、並べ替え、文章補充、読解の各セクションで概ね7割以上の正答率を達成しています。Basicコースの試験に合格するためには、英語の基礎をしっかり身につけること、そして治験分野特有の英語に慣れておくことが不可欠です。
単語補充(出題数:16、得点率:86.3%)
選択肢から適切な英単語を括弧に補い、文を完成させる課題です。
選択肢には、動詞・名詞・形容詞・前置詞などが含まれます。動詞では、能動態と受動態の区別や動詞の活用を判断する必要があります。また、治験英語で頻出する基本的なイディオムを問うような課題も出題しました。和文と英文の意味関係を正しく理解し、最も適切な語を選ぶ力が求められます。
出題例
空欄に入る適切な語句を選んでください。
有害事象は治験薬の投与前に発現した。
The adverse event occurred ( ) the administration of the investigational drug.
- in front of
- faster than
- prior to
並べ替え(出題数:6、得点率:78.7%)
日本語の課題文に対応する英文を、与えられた選択肢を並べ替えて完成させる問題です。英語の基本5文型を理解していれば正解に近づけます。分詞構文や不定詞、動名詞を含む問題もあり、文全体の構造把握力が重要です。様々な構文に慣れ、文章全体の構成を意識してライティング技能を高めましょう。
出題例
英文を完成させるために選択肢を並べ、4番目にくる番号を選んでください。
参加者は、治験薬の服用を中止するよう指示された。
The participant ( ) the investigational drug.
- to
- taking
- was
- discontinue
- instructed
文章補充(出題数:8、得点率:85.3%)
日本語課題文に対応する英文を選択する課題です。
単語の意味、動詞や接続詞の用法、コロケーションなど総合的な理解が求められます。適切な動詞や文構造を判断し、意味の過不足がない英文を選ぶ必要があり、ライティング能力も必須となります。
出題例
次の和文に対応する英文として、適切な選択肢を選んでください。
SAEとして報告された発疹について、参加者が補償を求めた。
- The participant was ordered compensation for the rash reported as an SAE.
- The participant requested compensation for the rash reported as an SAE.
- The participant received compensation for the SAE of rash.
読解(出題数:5、得点率:94.6%)
複数の英文センテンスで構成された課題文を読み、内容理解を確認する問題です。
時間制限があるため、短時間で英文を正確に読み解く力が必要です。課題文はそれほど難解ではありませんが、治験分野の英文に慣れていることが正解への近道です。
出題文書例:
治験プロトコル、EDCマニュアルなどの読解
