Japan CRO Association Annual Report 2022
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特別座談会江川:IQVIAでは、GCPリノベーションに当たってどんな準備をして、どういう教育をしているのでしょうか。稲留:私たちも皆さんと同じで、「これって何?」というところから始めました。ただ、IQVIAの場合はグローバルの枠組みというのがすでにあったので、少しアドバンテージがあったかもしれません。一方で、その枠組みを日本の今までの環境にどう落とし込むかみたいなところは、逆に枠組みがあるからこそちょっと苦労があったかもしれないとは思っています。井上:本当にそうですよね。なぜ必要かを説明せずにメールで依頼者書式を送って対応してもらうことが増えているように感じます。対応する内容の目的やなぜ書式が必要なのかを考えないで対応すると、自立した医療機関から「なぜ依頼者書式でなければいけないのですか?」「その必要性はなんですか?」と質問されます。それに答えられないことが続くと医療機関との関係性が悪くなってきます。目的は何か、なぜ必要かを理解すれば、「手順が可視化されておりとても参考になります。一旦会社に持ち帰り調整させてください」と言えるはずです。江川:確かに。しっかり本質をとらえて協議すると依頼者様式、施設様式は問わないという着地点にすんなり落ち着いたりしますよね。CRAがそう思い込んでいるだけで。植松会長:われわれは今まで自分たちで考えることをあまりせずに、ただ依頼者の言うことに従ってやっていた。そうしたこれまでの流れを変えていかなきゃいけない時期に来ているのではないかと思います。そういう意味で、CRO協会のモニタリングワーキングなどでは、どのようにRBMを医療機関に説明するかというような研修を行っています。今後はわれわれだけではなく、CRCさんにも参加していただいて相互理解していくという企画を立てているところです。CROやSMO、製薬企業は、それぞれがバラバラに活動しているのが現状ですが、こうした企画を通じて治験関連者同士の「架け橋」になることが、CRO協会の役割なのではないかと思っています。業務プロセスに問題がなかったか、インタビューの中から引き出していくことが重要です。江川:医療機関にプロセスを作ってもらうって、本当にずっと何年もやっている気がするのですが、本当に難しいですよね。その重要性を医療機関に説明できるようにならないといけないというのもCRA側の課題だと感じていますね。5喫緊の課題は医療機関にプロセスを作ってもらうこと植松会長:RBMが導入されたことで、CRAの行動は変化しましたか?江川:概念はようやく理解し始めた。では、実際の日々の業務に落とし込めているかというと…。青山:そうですね。やっとモニタリングプランにRBM導入していること、SDV頻度や閲覧すべきリスクが明記されるようになって、CRAが「今後はこういうモニタリングをしていかねばならないのか」と理解するようになりました。しかし、それを施設の方へ「CRAがわかるようにプロセスを記録に残しておいてください」ときちんと説明ができているかというと、ちょっとまだですね。私は今そこに課題があると思っています。江川:本当にその通りですね。医療機関側もCRAの確認のみで完結してほしいし、CRAも「医療機関で対応してほしいと依頼者から言われています」という返答しかできていないかもしれない。そこがもうちょっと概念のところから説明ができると納得してもらえる医療機関も出てくるのではないでしょうか。「では私がやります」と言ってしまうCRAが多いかなというのが課題かもしれないですね。井上:ここ数年大切だと考えているのが、医療機関でQMSを進める上で医療機関プロセスを整備していくことだと考えています。医療機関において手順が可視化されプロセスアプローチが実施できるようになれば、CRAはその手順を理解し、プロセスのモニタリングを実施することができるようになります。実際は、プロセス確認のために依頼者書式を医療機関と作成している現状があります。医療機関に手順があるのであればその手順の写しを入手させてもらえれば良いと考えています。大切なのは、医療機関におけるプロセスアプローチが実施できているかをセントラルモニタリング及びモニタリングにてエラーを確認し、何かあればプロセスを改善していき、PDCAをしっかりと回していければ良いのだと考えます。CRAは、何か問題がありそうであれば、必要に応じて医療機関に訪問し、医療機関での

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