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製薬協臨床評価部会、日本SMO協会との共同声明:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大下における治験・臨床試験 の実施・管理等について

2020年4月22日

昨今、新型コロナウイルス感染症が蔓延し、過日全国に緊急事態宣言が発出されたところです。
かつて誰もが経験したことの無い環境下で治験・臨床試験を遂行するにあたり、治験・臨床試験実施計画書、標準業務手順書等からの逸脱が発生している、あるいは発生が懸念されるとの情報をいただいております。 一方で 被験者の安全性を第一優先に考え、治験の品質も確保できるように検討を進めなければならないことはご理解の通りで、厚生労働省あるいは医薬品医療機器総合機構からも各種通知が発 出されています。
また、現在おかれている緊迫した情勢の中、治験・臨床試験の第一線で被験者の方と直接接する日本 SMO協会加盟各社の担当者からは臨床現場の声として以下のような事例も多く報告されてきています。

●被験者の方の来院が困難になり、検査・観察・評価を規定のスケジュール許容範囲内で実施できない。
●感染予防の為に被験者の方より来院調整の相談が多く寄せられる一方、治験依頼者(CRO担当者を含む)からは許容範囲での来院調整を強く要望されるケースがある。
●CRA はもとより、CRCに対しても不急の来院を控えるように医療機関からの要請を受け、支援業務に支障をきたしている。
●リモートSDVの要望は、切迫した状況下での業務負担の増加になるばかりでなく、接触機会の増加、ひいては感染拡大と医療崩壊につながる恐れがある。
●医療機関が診療体制の維持に困窮している状況下で、予定通りの被験者登録を要求されることにより、感染拡大・医療崩壊防止との狭間の中でCRC の精神的疲弊が進んできている。
●医療現場で治験・臨床試験に携わっている自らが感染者や濃厚接触者である疑いがある中で、スタッフリソースの確保と安全配慮義務のコンフリクトが生じてきている。

このような状況のなかで治験・臨床試験を進めるにあたり、様々な判断を求められることになりますが、GCP の原則でもある倫理性、科学性、信頼性の確保に立ち返った判断が重要かと存じます。
上記背景を踏まえ、私達自身が感染拡大を防ぐ方策等への協力を行いつつ、治験・臨床試験を適切な形で対応するために、日本SMO協会、日本CRO協会、並びに日本製薬工業協会 医薬品評価委員会 臨床評価部会より、以下についてお願い申し上げます。

●被験者の方および医療崩壊防止の為に医療関係者の安全確保が何よりも第一に優先されます。その上で、不要・不急の業務依頼は関係者同士でお互いに控えるよう熟慮をお願いいたします。
●治験・臨床試験実施計画書、標準業務手順書等からの逸脱が想定される場合は、あらかじめ逸脱対応を関係者と協力しご検討ください。対応方法として治験・臨床試験実施計画書改訂等も考えられますが、治験依頼者は必要に応じ医薬品医療機器総合機構への相談もご検討ください。
●新型コロナウイルス感染症の影響による混乱で逸脱が見過ごされたり、軽視されたり、隠蔽されることがあってはなりません。治験・臨床試験の関係者が、随時速やかに報告・連絡・相談できるよう、データインテグリティの観点からも関係者にご指導願います。
●発生した逸脱は、緊急度・重要度など優先順位を考えて関係者に報告し、相談して対応を検討いただくとともに、経緯や対応について必ず記録を残すようお願いいたします。
●このような状況下にあってもCRC・CRA・監査担当者などが医療機関に訪問しなければならないケースも多々あります。医療機関の先生方とよく協議し、治験・臨床試験を適正に進めるために必要な最小限の業務に留めることや、紙媒体を極力削減する等の対策を講じることにより、訪問を削減することも可能と考えられます。あわせて各企業および医療機関における電子化・電磁化の推進についてもご検討ください。

大変難しい状況ではございますが、このような時こそSMO・CRO・製薬企業が一致協力し、さらにRespect each other(お互いを尊重する)の信念を共有して適切な対応を行っていく必要があると考えます。
日々刻々と状況変化する中で、皆様におかれましては種々のご対応に苦慮されていることと拝察しておりますが、上記についてご理解賜り、各加盟会社の皆様におかれましても種々事案に冷静に対応いただき、ご協力いただいた方々のデータが無駄にならないよう活動いただけますよう、重ねてご協力をお願い申し上げます。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大下における治験・臨床試験の実施・管理等について [PDF:788kb]

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